Googleは「ググらない時代の突入」にどう対抗するのか?
先日4月24日にGoogleの親会社「アルファベット」が発表した第1四半期決算は増収増益となり、売上高・利益ともに予想を上回った。
検索エンジンの広告収入が増えたことや、生成AIの開発にも利用できるクラウドサービス「Google Cloud」が好調であったこと、YouTube広告収益が順調に増加したことが主な要因である。
<セグメント別売上高と成長率>

AlphabetのIRより筆者にて作成
巷ではChatGPTなどの生成AIに登場により「ググらなくなった」「Webサイトを見なくなった」という声が多数聞かれるようになったが、決算の数値はその声に対抗するかのように力強いものであった。
そう、この記事では単に今回の四半期決算を解説するだけでなく、生成AIによって「Googleのビジネスモデルが脅かされている」という現実に対し、決算で開示されたGoogleの戦略を踏まえて未来予測してみようと思う。
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生成AIの登場により脅かされるGoogleのビジネスモデル
近年急速に進歩した生成AIは、これまでGoogleが積み上げてきた「検索・広告」のビジネスモデルに対し根源的な問いを投げかけている。
ChatGPTに代表される大規模言語モデルの登場以来、ユーザーが必ずしも従来の検索エンジンやウェブサイト閲覧を経由せずに、直接AIから回答を得るケースが増えている。
実際筆者が見聞きしている現場でも「サイトのトラフィックが落ちた」「SEOは捨ててAIO(AI最適化)しないとまずい」という声が頻繁に聞かれるようになった。
しかも最近主要な生成AIサービスに搭載されるようになった「Deep Research」の性能はすさまじく、「人間が検索するよりも遥かに網羅的に情報を探索してくれる」という現実が訪れてしまっている。
このような動きが広がれば、当然Googleの検索広告モデルには大きな脅威となる。
検索回数自体が減少すれば検索エンジン上の広告表示回数(インプレッション)は直接的に減ってしまうし、仮にユーザーがGoogle検索を使ってもAIが検索結果を要約してワンストップで答えを示す「AI Overview」に頼るようになった場合、従来のようにユーザーが検索結果ページをスクロールしたり複数のサイトをクリックしたりする頻度が下がる。
いわゆる「ゼロクリック検索」問題だ。

GoogleでAI Overviewを表示した結果
その結果、検索結果だけでなく、サイト上に掲載される広告の表示回数やクリック率(CTR)の減少が避けられない。
これはGoogleのサービスに置き換えると、「Google検索広告」と「Googleのディスプレイ広告ネットワーク」というGoogleのビジネスを支えてきた2大サービスの崩壊を意味する。
もっとも、短期的には2025年Q1の好調な広告収益が示すように、こうした構造変化の影響は限定的である。Google自身も生成AIを検索に組み込む「AI Overview」実験を始めてまだ1年足らずであり、その普及率は現在検索全体のわずか3%程度と推計されている。